2024年8月9日金曜日

奥様、お手をどうぞ 3

始祖「Ziggyの餌やりはおまえに頼む」
ここストラウド・マナーで飼われている猫は代々「Ziggy」と呼ばれている 
いちいち名前を考えるのが面倒だから、というのがその理由らしい
ドニア「ひとつ、訊いてもいい?」
始祖「ん?」
ドニア「このだだっ広い館に住んでいるのはあんたひとりなわけ?」
始祖「ひとりじゃない Ziggyもいる」
ドニア「…… 淋しくはないの?」
始祖「………」
始祖「貴様、誰に物を言っている?」

あたしは7人兄弟の末っ子として産まれた 15歳で反社会的集団、いわゆるギャング団に入ってからも大人数でわちゃわちゃと暮らしてきた
だから、ヴラドのような「一匹狼」の生き方がいまいち理解できなかった
始祖「明日から本格的に『講義』に入る 今のうちに英気を養っておけ」
ドニア「あいよ、ヴラド」
始祖「…… その呼び方、やめんか」

ドニア「だいぶ上達したね、あやし」
あやし「ありがとうございます」
あやし「俺の下手くそなピアノをほめてくれるのはボスだけです」
あやし「ジャッコに言わせると『耳栓をよこせ』ですし」
ドニア「(笑) …あたしは好きだよ、あんたのピアノ」
子供を産んだことがない あたしにとっては
あの子らは 手下というより 息子同然だった
ジャッコ、ボニー、コナー
そして、あやし
あんたらの無念は あたしが きっと 晴らしてやるからね 
待っていろよ、バリトン一家め ひとり残らずぶっ○してやる

…また、いつもの夢だ
パスカル? どこだ?
ああ、そうだ 
俺は 夢の中で
何度も 何度も おまえを 喪い続ける
ドニア「うなされていたね 怖い夢でも見たの、ヴラド?」
始祖「…… 何でもない ただの夢だ」
ドニア「そう」
始祖「……… え? ええっ!?


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奥様、お手をどうぞ 2

死なずにすむ方法? 
そんなのが あるのかい?
いや、正確に 言えば おまえは
人間としての 生を ここで終え
我がストラウドの一族に 加わり
ヴァンパイアとして 新たな 生を 始めるのだ
. それでも いいか?

  …… いいさ、
  あたしは かまやしない
*「♪~♫」
*「…そろそろ目覚める頃だな」
ギギーッ(棺が開く音)
ドニア「…あ、あれ?」
*「気分はどうだ、ドニア」
ドニア「ああ、よ~く寝た♪ …で、あんた誰?」
*「そういえばまだ名乗っていなかったな 俺の名はヴラディスラウス・ストラウド4世 ヴァンパイア・ストラウド一族を統治する者だ」
ドニア「ヴラディスラウス? 舌をかみそうな名前だね 『ヴラド』って呼んでもいい?」
始祖「俺様を名前で呼んでいいのはごく親しい者だけだ」
ドニア「これから親しくなればいいじゃん」
始祖「ご免蒙る」
ドニア「けち」
始祖「俺のことは『始祖様』と呼べ」
ドニア「よっこらしょっと」
始祖「おまえが一人前のヴァンパイアになるまで俺がいろいろと教えてやる 親ヴァンパイアの務めだからな」
ドニア「お手やわらかに頼むよ、ヴラド🖤」
始祖「『ヴラド』って呼ぶな それから🖤もよせ、ばばあ」
ドニア「『ばばあ』呼ばわりはやめとくれ」
始祖「館の中を案内する ついてこい」
ドニア「あいよ、ヴラド」
始祖「…… だから『ヴラド』と呼ぶなと」
始祖「死んだオヤジが残したコレクションだ 哲学書、歴史書、エロ本まで何でもそろっている」
始祖「最上階は俺の執務室だ 俺の客はここに通せ」
始祖「おまえはここを使え 妹の部屋だが、今はいない」
ドニア「へえ、あんた妹さんがいるのか」
始祖「彼氏とラブラブ同棲中だ しばらくここには戻ってこないだろう」



どうでもいい補足説明:始祖様の異母妹サラは、のちに幼い娘を残して他界します
参照記事:晴天をほめるには日没を待て「子供の情景 1」


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